振り返る夏2

2017年7月19日

ある夏の暑い日
利用者宅の玄関のドアを開けた瞬間、ヘルパーの危険信号がピカッと光るほどムワ~っとする暖かい空気が押し寄せてきました。急いで部屋へ入っていくと、

「こんなかっこですまんなあ、今日はさすがに暑い。」
と保冷剤をタオルで頭に巻き付け、
ランニングシャツとトランクス姿。汗だくで、顔を真っ赤にしながらも背筋を伸ばしてきちんと座っている90代の紳士・・・
エアコンのリモコンを見れば暖房。
「わ~!!暖房ですやん!!大丈夫?!!」
すぐに窓を開けて換気
「暖房になってたか、暑いはずやな~。トコペイ島(戦争中に派遣された南方の島)でもこんなに暑くなかったなあと思っとったんやハハハハ」

昨日生きて話していた人が、翌朝隣で死んでいる。上官が白飯を食べている傍らで餓死していく仲間。友人が死んでも泣き言を言えない。暇つぶしのように殴られる。明日は自分が死ぬかもしれない。
たくさん聞かせてもらった戦争中の軍隊の話がワーっと頭の中を走ります。
国の力で戦争に巻き込まれた人たちは、想像できないほどの悲しみを背負って生きてきた。
その荷物は簡単には下せないと思います。
だから楽しんでもらわないといかん!笑わせて、その隙に背負った荷物を減らす!ヘルパーのというか私の使命だと思ってました。

しかし暑くても寒くても痛くてもつらくても「言うたってしゃあない」
と背筋を伸ばして生きていた90代の紳士。
一緒に過ごした日々を振り返ると
楽しませてもらってたのはこっちでした。あんな男前と過ごした夏も宝物です。

投稿者 : ヘルパーおかめ